2016年12月4日日曜日

やや個体差あるが素晴らしい - 新生わたらい茶「かりがね煎茶」


200gで800円程度であるが、「地元の人に愛されている」という話を耳にしたため、常飲用に購入。

世の「雁金」は、殆どが茎というものもあれば、葉もかなり入っているものもあり、その幅は広い。
新生わたらい茶さんの雁金は後者で、葉が多いほうだろう。

そのお茶は秀逸。

新生わたらい茶さんの普通茶は深むし気味で細かいが、茎茶では茎のお陰もあり細かくなりすぎず、渋みが少ない。
煎茶でやや単調なところもあった味も、むしろ茎の風味がうまく補い複雑味をもたらしている。

「上煎茶 松」を飲んだとき、「100g900円以下の茶葉でこれ以上は望みようがない」と思ったが、「雁金」ゆえ、カテゴリーが同じとはいえないものの、こちらのほうがバランスが良いのでは無いか?
というか、「特上」まで含めてもこのお茶が一番のバランスではないか?
というほどの衝撃を受けた。

地元の人々に人気があるというのも納得の出来だ。

日常生活の中でがぶがぶ飲むようなお茶としては、もうこれだけあればいいかな、とさえ思わされた。
が、「上煎茶 松」の後にこの「雁金」が現れたように、さらに凄いものがあるのだろうか?

2016年10月12日水曜日

良心の塊 - 新生わたらい茶 上煎茶 松

極上煎茶」は素晴らしい出来だったが、夏を過ぎたころに購入したものは、新茶の香りが抜け、熟味が出てくるまではやや淡白な味となった。

2ランクほど下がった「松」はというと、摘採時期が遅くなった分、茶葉が大ぶりになり、その分だけ普通蒸し的な外観になった。
「極上煎茶」の方が葉が小さい分、深蒸しのような外観だったのが興味深い。

「松」は、「極上」に比べるとややブラウンの屑葉や茶柄も散見される。

味は、葉が大ぶりになった分だけ強くなったが、その割には渋みは少なめで、不思議なまろやかさがある。
夏過ぎの「極上」よりもむしろ「松」のほうが、複雑な味、香りを纏っている。
多めの湯量で淹れたときに相性が抜群で、「常茶」的な用途に最適。
新生わたらい茶さんのお茶らしく、瑞々しさも健在。

この価格帯、そして八十八夜以降の大きめの茶葉でこのように瑞々しさを失わないだけでも稀有なのに、無農薬と来ている。
100g900円以下の茶葉でこれ以上は望みようがない、良心の塊のようなお茶。
高いお茶なら色々と良いものはあるが、この値段でここまで素晴らしいお茶にはかつて巡り合ったことが無い気がする。

生産者直売に近いからこそできることで、競りや小売店いった流通を通したら、この価格でこの品質は望み難い。

この下のランクである「竹」はどうなっているのだろうか?
「竹」は「焙煎温度をやや高め」とあるので、新生わたらい茶さんでは異例の、火香の強めの煎茶なのかもしれない。
文面を見る限りおそらく好みとしては「松」となりそうな予感がするが、飲まずにはいられない。

2016年9月26日月曜日

安定の一保堂 萬徳(まんとく)

昨年の猛暑で「良いお茶」たちが討ち死にする中、乾燥をしっかりさせた一保堂さんの萬徳は生き残った
本年のものも、同じく玉露にしてはかなり乾燥させているが、百貨店から方々へと贈答品として旅立つ一保堂さんのお茶としては不可欠かと。

そして、さつき濃さんの「中嶋農法のお茶」以上に、昨年のものとの区別が付かない、圧倒的な安定感。
しいて言うなら、昨年よりかぶせ香が増えたか。
玉露は独特のうまみといつまでも残るその余韻を楽しむお茶。
数滴で十分なほどに玉露のうまみは濃厚です。
玉露独特のうまみをさっぱりと味わえ、さらにお茶らしいすっきりさも楽しめるのが「萬徳」。ほんのり感じる渋みがあるので、玉露の濃厚さがちょっと苦手…という方にもおすすめです。しっかり湯冷ましをしてあげると、おだやかなうまみを引き出せます。
サイトにはこのようにあるが、玉露の飲み方を知らない人への配慮でもあるのだろう。
多少荒っぽい飲み方をしても(もったいないが)、飲めてしまうし、乾燥させた味ではあるが、伝統的な玉露の淹れ方をしても美味しくいただけるところが見事。

2016年9月25日日曜日

[番外編・台湾緑茶] 自然農法 金萱緑茶 天級

2015年4月4日~5日摘採。「清明節前」に摘んだとわざわざ記しているように、台湾でも早い摘採なのだろう。

あまり丸めすぎない茶葉。手摘。台北の東南に位置する新北市坪林区は、「包種茶」で名高いそうだ。

金萱ということで、ミルクのような濃厚な味がするかと思いきや、淡く、ハッカのような香り。
外観にシルバーチップスが見られるように、芽の味も。
ただし、芽の生臭い味は無く、ハッカのようにすーっと抜ける。

奇しくも中国本土の最高級紅茶で、このような味作りのものを最近飲んだ。
世のトレンドはこういう味作りなのだろうか。

2016年9月24日土曜日

「狭山火入れ」も裸足で逃げ出す 新川製茶「プレミアム有機煎茶」

新川(にいかわ)製茶「うきのはの山茶」プレミアム有機煎茶1200円+税/100g
  • 「朝つゆ」を主体に3種類の品種をブレンド
  • 深蒸し
  • 有機栽培 
  • 福岡県うきは市で有機栽培40年
とのことである。

そこまで深蒸しという感じでもなく、やや深蒸しという感。

何より驚いたのは、「狭山火入れ」もびっくりなほどの火入れの強さ。
記憶にある限りでは、今までに飲んだ福岡県のお茶の中で一番火香が強かった。
個人的な趣味とは違うが、火香を愛する人に良いのかもしれない。

サイトを見ると、福岡らしい「意識高い系」 の雰囲気が感じられたが、日本茶スノッブなら普通蒸しで火入れを弱めにしそうなところを、そうはならず、深蒸しと極強の火入れという点が興味深い。

2016年9月22日木曜日

熟成の深み 「都の緑」

蓬莱堂茶舗さんは、新茶が出て暫くは前年のお茶と適宜ブレンドしているらしい。
熟成した前年の茶葉はコクと旨みが豊かで、本年産の茶葉は色と香気が優れているとのことである。
それらを混ぜ合わせることで、味に深みが与えられている。

数年前の「都の緑」に比べて、茎などの混入比率がずいぶん下がり、外観は勢龍(1600円)に近づいたと思う。

アミノ酸的な旨み成分と華やかな香りは、「常盤木」や「勢龍」に比べるとややおとなしい。
その代わり、濃厚な緑の味を楽しめる。
ある意味、日本酒で「純米大吟醸」よりも「純米酒」のほうが米の良さを味わえると言われるのに似ていて、非常に美味しい。

ある程度柔軟な淹れ方にも対応してくれ、少なめでストイックに淹れても、やや多めのお湯で気楽に淹れても美味しい。

1200円~1300円ぐらいとしては、これまた最高のお茶の一つ。

2016年9月18日日曜日

薬と思えばよいのか 「朝宮の粋」

無農薬の草分けでもあるかたぎ古香園さんの「朝宮の粋」100g 1500円+税。

酸っぱいといえるほどに乾燥させた茶葉は、昔の無農薬茶のイメージそのもの。
外観は大降りだが茶葉は選別されている。
旨みはそこそこ、火香もなかなかある。
ここまで乾燥させていると自分には味がよく分からなかった。
もっと安いグレードのものを買って薬と思って飲むのが向いていると感じた。

袋を見ると、

表に「特別栽培農産物 農薬不使用栽培」
裏に「節減対象農薬:栽培期間中不使用
化学肥料(窒素成分):栽培期間中不使用」

とある。

栽培期間以外は使用しているということなのだろうか??

2016年9月16日金曜日

圧倒的な安定感 中嶋農法のお茶

知覧町の古屋五男さん生産、「さつき濃」さんのお茶。

昨年度は全国的に難しい年だったのか、一昨年度並のお茶にめぐり会えない中、この銘柄だけが前年に劣らぬ出来を見せてくれた。

今年度はどうか。

殆ど変わらぬ美味しさである。
青りんごのような圧倒的なフルーティーさが押し寄せてくる、楽しいお茶。

火香は例年通りややあるが、気にならない程度。
例年より深蒸し気味か。
そして、例年通りちょっと乾燥させすぎているように思うが、これでフルーティーさを出せるのだから凄い。

税込1200円以下で、ほとんど誰にでもお勧めできるお茶だ。

皮肉でも何でもなく、高級煎茶然としたしぼり出しを使ったような少量の淹れ方では、このお茶の本来の良さは分からない。
ある意味番茶のように大き目の急須と湯呑で気軽に淹れたときにこそこのお茶の良さが発揮されるように思う。
(最近、売り手側が想定しているお湯の量や淹れ方が何となく見えてくる気がする。)

水分をしっかり取りたいとき、何かをしながら飲むときなど、非常に良い。
この淹れ方、飲み方は、お茶にあまり詳しくない人の飲み方に近くもあるため、マニア以外への贈答品にも好適であると思う。

三年連続で味がここまで安定しているお茶は、自分の知る限り、ほかに無かった。
製茶した方々の仕事に拍手喝采を送りたい。

2016年7月30日土曜日

素晴らしい - 新生わたらい茶「極上煎茶」1,296円

一昨年は繰り返し飲み、昨年は少しばかり飲んだ新生わたらい茶さんの「極上煎茶」、今年はどうか。

一昨年の味が戻った。いやそれ以上かもしれない。
素晴らしい出来だった一昨年よりも、柔らかく香り高い。

ミル芽とも違うがフルーティ極まりない香気が口いっぱいに広がる。

昨年気になった茶色(ブラウン)の葉屑の混入も見られず、雑味が無い。
茶柄も少なく、外観もこの3年で1番良い。

火香は少ないがえぐみは無く香気高く、パサパサせず瑞々しい、素晴らしい仕上げ。これは例年通り。素晴らしい製茶のセンス。

被せ香も感じるが嫌らしさは無い。
葉が柔らかいのか、川根茶などに比べて渋みが少なく柔らかい。

しかもJAS認定有機栽培(無農薬)。
有機というとパサパサになるまで乾燥させて酸っぱくなり、茎まで入った大ぶりな茶葉のものが多いが、そのような印象を持っている人にこそ、このお茶を飲んでいただきたい。

摘採時期が早いのか、蓬莱堂さんの宇治茶などに比べるとフレッシュさに偏った味ではあるが、これはこれで素晴らしい。
ただし、この新茶の香りというのは揮発性のものらしく、開封後どんどん消えてしまい、100g飲みきるころには、何割か本来の香りを失っている。
それでも、無農薬でやっているという点も考慮したら本当に凄いことだ。

このお茶が1296円とは驚異としか言いようが無い。
南園さんの「月牙泉」も絵に描いたような高級茶だったが、2000円+税するし、開封したばかりの状態に関しては、人によってはこちらの「極上煎茶」の方が好きと言うかもしれない。

美味しくて、安くて、安全。
これはリピート必至である。

2016年7月28日木曜日

特撰南園

前回の「月牙泉」(2000円+税)があまりに美味だったため、ほかは一体どうなっているのだろう?という興味から、一つ下位である「特撰南園」(1500円+税)を購入してみた。

何より目立つのは「月牙泉」に比べてずいぶん感じる火香である。
そして、霧深い山間を感じさせる素晴らしい香気は減衰し、やや平地っぽい味になった。
やはり「月牙泉」の素晴らしさが際立つ。

斜面一つ違うだけでも全く異なる味になる、とのことで、単純にこちらが平地というわけでもないのだろうが。


2016年6月29日水曜日

南園「月牙泉」 100g 2000円(本体)

祖師谷大蔵駅から北に延びる有名な商店街には、数十メートルごとに次々と日本茶屋さんが現れ、その多さに驚かされる。

南園さんは駅からやや離れていて、非常に小さなお店だが、古めの萬古焼などもあり、雰囲気がある。
本当に気まぐれにではあるが、100g=2000円+税の「月牙泉」なるお茶を購入してみた。
このお店で一番高級な煎茶のようである。


何気なく飲んでみたところ、これぞ高級茶。
このバランスの良さは玄人としか言いようが無い。

火香は世間一般で言えば少ないぐらいだし、乾燥させすぎてもいない。
面白いのは、肥料の影響か、少しミネラル的な味(?)がすることだ。
そして、川根茶にある、少し茎のような鮮烈な香気。

外観は、芽の部分が多く、黒みがかっているが、秋山園「自然仕立て」ほどではない。
が、新茶+川根茶の香気を中心にバランスよく纏め上げた味作りのうまさには唸らされるものがある。

入念に調べて辿り着いた数多の名店を押し退けて、ふらりと入ったお店のお茶がここまで美味しいことに、驚きを禁じえない。

何故、祖師谷大蔵の老店主がやっているごく小さなお店のお茶が、ここまで美味しいのか。
実は、店主のご実家は川根にあり、そちらの南園製茶(有限会社みなみ)のお茶なのだそうだ。

夏を越える前に飲むお茶としては、新茶の青臭さこそ少ないものの、今年飲んだ中で今のところ一番だ。

2016年6月28日火曜日

蓬莱堂茶舗 新茶

蓬莱堂さんは、世の新茶礼賛主義とはかなり距離を取っておられるようだが、その新茶はどうか?
茶葉を見ると、100g 1200~1400円ぐらいの出来に見える。

びっくりするほど火香が無いため、エグみがあると表現する人もいた。

「新茶は青臭くて飲みにくかった」と言われていたころのお茶作りを、ある程度踏襲していると思われる。

もちろん、「大走り」など論外ということになるのだろうから、ある程度生育した茶葉で、そういった感じの味である。

青々しさの割に旨みが少なめなので、低めの温度で淹れるとエグみも感じられるが、熱めのお湯で茶葉を多めにして淹れると、青臭さが飛び、ジューシーさが出てきて、何とも美味になった。

2016年6月27日月曜日

秋山園 平成28年産 新茶 自然仕立手摘 2,000円/100g(本体価格)

秋山園さんの言う「自然仕立」は、お茶を畝にしないことを意味しているそうで、必然的に手摘みになる。
新茶の味はどうか。
黒みがかって、思ったよりも短い茶葉が多い。
一見して丁寧に作られたのが伝わる。

そして香り立つ。これはある程度の火入れを予感させた。

多分に漏れず、秋山園さんでもこの時期は火入れを弱めにしているとのこと。
また、高級茶らしく、通常の半分ぐらいの温度の気持ちで淹れてほしいという説明書きも添えてあった。

しかしその通りに淹れてみると、とにかく旨みは多いのだが、肥料的というかアミノ酸的な旨みに偏っており、火香も言うほど少なくないと感じる。

色々な淹れ方を試した結果、一般的な高級煎茶よりも高めの温度、多目の湯量で、つまり並級煎茶の如く少々雑に淹れたときに、最もこのお茶の凄みが出るように自分には思われた。
おそらく、そのほうが突出したアミノ酸的な旨みが適度に収まるということだろう。

ただ、これだけ丁寧に作られたお茶であれば、やはり高級茶的な淹れ方をしたときにバランスが取れるほうが良いように思う。

2016年5月25日水曜日

生仕上げ ゆたかみどり

毎年楽しみにしているお茶。
鹿児島県枕崎産。
昔の青臭いまでの新茶の香りを演出するため、思月園さんが選び抜いた「ゆたかみどり」を、あえて日持ちを捨て、水分量多めで仕上げた名作。
水分の都合上、例年5月末頃までの販売で、早目に飲み切ることが推奨されている。

今年は例年よりも濃厚で、分かりやすくメリハリのある風味。
それゆえに、淹れやすく、このお茶の特徴であるジューシーなまでに瑞々しい味が引き出し易い。
早目に飲み切ってくれる人ならば、誰にでも薦めることができる。

実際、あまりお茶に詳しくない人に一袋さしあげたところ、感銘を受けていた。

今年のは当たりの部類に入ると思う。
少し味のぼけた感じがした昨年を踏まえて葉を選ばれたのが伝わってくる。
ただし、やや大味なところもあるため、来年はこれに繊細な香りも更に加わったら嬉しい。
いずれにせよ、たとえ上手くいった年もそうでない年も、腰を据えて飲み続ける価値があるお茶。

思月園さんのブログによると、年々このお茶を見つけるのが難しくなっているとのこと。
また、熊本の地震では同県のお茶業界も甚大な被害を受けているとのこと。
5年前は東日本大震災と放射能に怯えながら、こうしてお茶をいただけることがいかに恵まれてることかを痛感した。
熊本の復興を祈りつつ、本年のお茶も感謝を忘れずに頂きたい。

2016年5月5日木曜日

「変化」を超えた4月の「勢龍」


「勢龍」は「都の緑」よりも「常盤木」に近いと思っている。

あえて4月に昨年の勢龍を飲んでみる。

蓬莱堂さんは、伝統に則るということで、「火入れ」はなるべく避け、冷凍保存も行わずあえて空気を含ませた常温の壷で茶葉を保存し、販売時の袋詰めも酸素を抜かない方式を選ばれている。

これらはいずれも「保存」という点では難易度を高めるわけだが、「味を保つ」というよりもあえて「変化を楽しむ」ものと位置づけられているとのことである。

ただ、さすがに次の新茶が出始める時期ともなると、「変化を楽しむ」という段階を通り越してしまったと自分には感じられた。
少し瓜のような癖のある臭いを感じた。

これは、いままでに買った「勢龍」のみならず、どの蓬莱堂さんのお茶でも一度も経験したことが無いものだった。

こんなこともあったが、 「勢龍」はとても好きなお茶だ。
次年度はもう少し早い時期に「勢龍」を買いたいと思う。

2016年4月15日金曜日

温度に敏感!熱湯玉露「玉の輝」

「玉露に熱湯?」と聞くと軽薄な企画商品のように思えてしまうが、近畿地方を中心とした「かぶせ茶」の異名だそうである。

「熱湯」というのも本当に100度に近い温度というわけではなく、あくまで、煎茶の温度=玉露よりも熱い温度、というような意味合いとのこと。

本来の玉露は、黒い遮光幕ではなく葦簀(よしず)を用いなければならないそうだが、こちらは葦簀を使っているのか、現代的な遮光シートなのかは分からない。

淹れてみるととにかく温度に敏感なお茶で、一般的な煎茶は温度によって特に渋みが変わるものだが、このお茶は甘みがとにかく変わる。
たしかに宇治の玉露が少し煎茶っぽくなったようなお茶で、一般的なかぶせ茶の青海苔やりんごのようなかぶせ香は抑制されている。
玉露的な意味の甘みが一度にたくさん摂取できる、楽しいお茶。
水色(すいしょく)は伝統的な黄味がかったもの。

100g使ってもこのお茶の真価を発揮させた実感が無いのが悔しいところ。

2016年4月4日月曜日

昔の新茶の味を思い出す! 秋山園 手摘み 100g 2000円

黒さこそそこまでではないものの、細く撚られた素晴らしい外観。

味は、とにかくミル芽の味がふんだんに感じられ、火入れは「常盤木」よりもやや強め。

この味は、覚えがある・・・

そう、昔、親がデパートやスーパーで買ってくれた走り新茶の味だ。
手摘みゆえそれを更に澄んだ味にした感じで、新茶の季節から一年近く経っているから香気はより落ち着いている。
が、方向性は同じだ。
自分の舌が変わったというより、こういうお茶が少なくなったのだろう。

土壌の改良が凄いのか、静岡茶に多く見られる厚みある葉の渋みは非常に少ない。

ほぼ同じ値段の「常盤木」(蓬莱堂茶舗)が本流の味とすると、こちらは偉大なる傍流、新世界の高級茶という味である。
やや芽の風味に偏ったきらいはあるが、鮮度保持を含め圧倒的な品質のため、美味しいと脱帽するほかないくらいの素晴らしさがある。

このお茶で火入れ・乾燥を少なくして、新茶の時期に飲んだら、香りが爆発するような、さぞ凄い新茶になると思うのだが。

2016年2月19日金曜日

今年度はもうほかのお茶は要らない?――蓬莱堂「常盤木」

蓬莱堂茶舗「常盤木」(2,150円)は、同店通常ラインナップの煎茶の中では最上位のものになる。

この上をゆく「出品茶 上」(3,250円)、「出品茶」(2,750円)は、普通に考えたらブレンドしていないと思われるが、通常品の「常盤木」以下は味を保つためにブレンドしているかもしれない。
であれば、「常盤木」以下にこそよりお店の味が色濃く出ているかもしれない。

外観は、絵に描いたような高級煎茶そのもので、黒味がかって、細長く撚られたもの。
前回書いた「一保堂」さんの「嘉木」よりも遥かに典型的な高級煎茶の姿(なり)をしている。

味はもう完璧の域で、旨みの周りに葉の味が重層的に広がる。

アミノ酸的旨みだけではなく、葉の複雑な味がバランスよく混ざっているところが蓬莱堂さんのお茶の真髄であると思う。

残念ながらほとんどのお茶は、肥料過多によりアミノ酸的な旨みばかりが突出してしまったり、反対にナチュラル志向のものはパサパサで渋みばかり突出したり、あるいは、火入れしすぎてその香りばかりが突出したり、どこからしらが立ってしまいがちだが、このお茶はそのようなところが無く、本当にバランスが良い。

そして、今年度のこの「常盤木」も、黒味がかった茶葉に見られる木の実のような味も。

渋みは一般的な静岡茶より少ないものの、「一保堂」さんの「嘉木」よりはあるので、同じように絞り出しで玉露を淹れるようなやり方をするとさすがに渋みが目立つ。
小さめの急須が向いているかもしれない。

今まで飲んだ今年度産の煎茶の中では断然完成度が高いと感じた。

無農薬を除いたら、今年度はもうこのお茶で打ち止めでも良いかもしれない、と思うほど。
もし、これから「良い煎茶がどういうものか知りたい」という人がいたら、このお茶をお勧めしたい。

できることなら、窒素の害から自由になったお茶や無農薬のお茶を売るということにも、より力を入れていただけたらと思う。

2016年1月14日木曜日

淡い味を最上位に据える矜持――一保堂「嘉木」

一保堂さんの煎茶でも通常ラインアップ中では最高級に位置する「嘉木」。
言うまでも無く茶経から引用したと思しき名である「嘉木」だが、一保堂さんは喫茶店にも同名を付けており、この語への愛着を感じる。

茶葉を見ると、そこまで針状には揉んでこそいないものの、若い芽がふんだんに入っている。
淹れてみると、若い芽らしく、渋みの少ない淡い味。
香りは華やか過ぎずあくまで落ち着いている。
また、ある程度しっかり乾燥させている。

下級煎茶をガブガブ飲むような淹れ方では、全く真価を発揮できない。
絞り出しを使い、高級煎茶に相応しい淹れ方をすると、俄然魅力を見せる。
エキス的になったときに初めて、このお茶の渋みの少なさが意味を持つ。
ただ、蓬莱堂さんのお茶のような茶葉の重層的な旨味は、「嘉木」にまだ欠けている点か。

それでもこの澄んだお茶を前にすると、「中嶋農法のお茶」はアミノ酸的旨みに偏りすぎていて肥料のやり過ぎと火香が気になってしまうほどだ。
価格が全く違うとはいえ、別世界の味である。
この淡く澄んだ茶葉を通常のラインアップの最上位に持ってくることに敬意を表したい。

2016年1月9日土曜日

昔、先入観にあった「有機」の風味 有機一番摘み 月ヶ瀬煎茶

気になっていた奈良県の有機栽培茶。
「農薬不使用の・・・」ではなく、ちゃんとJAS有機認証を受けている。

茶葉は大きく育った葉が茎までしばしば入っているので一針二葉の味とはほど遠い。

何より、とにかく乾燥させているので、酸っぱいといえるほど渋くなっている。

私が有機栽培のお茶をよく知る前に抱いていた先入観そのもののようなお茶。

有機栽培とこういう仕上げ方はセットになりがちであるという現実を見ると、多くの消費者が有機栽培のお茶というものに対して思い浮かべそうなものを忠実に体現しているといえる。