2012年1月1日日曜日

中森製茶「極上煎茶」

中森製茶「極上煎茶」70g 1,000円
2011年12月

三重県は北部が高級茶産地で知られるが、南部は庶民的なお茶が多いのだそうだ。
中森製茶さんは南に位置するそうだが、本品は高級ラインで、かぶせ茶になっている。

伊勢茶の特徴は葉肉が厚いことだそうで、本品は始めとにかく渋みが出やすかったが、
慣れてきたら、鮮度香、濃厚な旨み成分、高級部位の繊細さと控えめな覆い香が一体となり、「旨い!」とうなるような味が出せるようになった。

硬度が10mgしかない熊野の水と合わせてみたところ、こういうのはあまり信じていないほうなのだが、三重県タッグということでか、さすがに良かった。

「かぶせ茶」でも覆い香は少なめで、普通の煎茶寄りの味わいの中に、青々とした味が在る。
このバランスは好きだ。
ただ、青々とした味のトレード・オフ関係というべきか、やや水っぽいというか香りに欠ける感じもあるか。

品評会に出るお茶とは路線が異なるような気がするが、好きなお茶である。

品種はやぶきた。蒸しは普通から中蒸しぐらい、火香も普通かやや弱めか。
(ただし、同社のこれより下のランクになると、火香が非常に強かった。)

芽の部分もなかなか多く入っている。

二淹目まで味がしっかり残っている傾向があるのも素晴らしい。

パック詰めは空気を抜いていないので、酸化には注意が必要か。

中森製茶さんは、有楽町の東京交通会館に支店を出されており、このビルは各都道府県のアンテナショップが沢山入っていて、とても面白い。
三重県のアンテナショップは東京には無いそうだが、常滑焼と共に急須で名高い四日市の万古焼は、もっと多くの人に知られて良いのではないかと思う。

また、中森製茶さんは国連大学のファーマーズ・マーケットや都内デパートにも時折出展されているようである。

2011年12月31日土曜日

八女普通蒸煎茶、福岡県広川町産、やぶきた

八女普通蒸煎茶、福岡県広川町産、やぶきた

東京都優良茶 品評会出品茶
1,260円/100g
2011年10月思月園にて購入


玉露でも深蒸しでもない「八女の普通蒸し煎茶」は、とても美味しいのに、東京ではそんなに積極的に販売されていない。
思月園さんでも八女の煎茶は深蒸ししかない時期があるが、東日本における放射性物質の影響もあり西のお茶が増加、八女の普通蒸し煎茶も入ってきた。
「八女の普通蒸し煎茶」ファンとしてはありがたいが、放射性物質の影響に苦しむ東日本の関係者のことを考えると苦しくもある。

さてこのお茶は、1,260円の割には、茶葉の色も薄緑の部位(芽の薄緑ではなくて)がけっこうあり、芽も多くはなく、そんなに高級という見た目ではない。
淹れてみても、高級部位特有の鼻から抜けるような繊細な香りは少ない。
が、旨み成分はかなり濃厚。

ただ、本品はどうも火香が強いなあと。

淹れ方にかなり敏感な茶葉で、温度や抽出時間によっては、老ねたような渋み・苦味ばかりが強調されてしまうことも。


また、同じ茶葉で2回目に淹れたときの甘くぼけた味が面白く、ここに八女の特徴がよく出ているとさえ言えるかもしれない。

2011年11月7日月曜日

八女かぶせ茶 福岡県広川町産 やぶきた

東京都優良茶 品評会出品茶
1,475円/100g
2011年10月思月園にて購入

久々のかぶせ茶。
かぶせ茶は、製法、味ともに、煎茶と玉露の中間的なものといえる(wikipediaがよくまとまっている)。

思月園さんによると、
「このかぶせ茶は、味・香りは申し分なかったのですが、粉や細い茎が多く含まれていて、手を出しにくい外見でした。そこで思月園がチャレンジ精神を発揮して落札し、静岡で自前の仕上げをしました。何度も唐箕やカラーセンサーに通して、ようやく販売できる形状になりました。」
とのこと(サイトより引用)。
茎や粉を篩い分けると、目減りしてしまうので、歩留まりが悪くなる。
手間とお金がかかったお茶である。

確かに、立派な「覆い香」を持つお茶だ。
見た目は玉露とずいぶん違い、中蒸しぐらいの細かさだろうか。
茶葉の質ではなく、細かさで濃厚な味が出ているようなところはあり、玉露よりも庶民的な感じがする。

普通の煎茶に比べてかぶせ茶は体験が少ないので、まだまだ自分の中で基準ができていない。
久々に飲んだら、「覆い香」もとても良かったので、今後、もっと経験を深めてゆきたい。

2011年10月10日月曜日

秋のお茶

高級茶が出揃う秋

一般の消費者からするとお茶といえば新茶、5月あたりが楽しみである。
自然の摂理を考えれば真っ当な考えなのだが、お茶を売る側からすると、秋も非常に重要な季節のようだ。

というのも、現在の日本では、夏の終わりから秋に主要な品評会、入札会が目白押しだからである。
あるお茶屋さんが、「美味しいお茶は、新茶の季節よりも秋の入札会で出てくるものだ」と仰っていた。
丁寧に作ったお茶は、低温保存され、秋の入札会に出されるものが多い・・・・つまり、そういうお茶は秋に摘まれたものではなくて、春に摘まれたものが秋に出てくるということである。

植物の特性としては、新鮮さや栄養が減ってしまうというのは間違いないと思うが、「滋味がある」という言い方をする人もいる。

業界的に、「新茶の華やかさよりも、夏を越えたお茶のまろやかな味を楽しむのが通」というような風潮は存在すると感じる。

が、いくつかの点で疑問がある。


茶道(抹茶)では「口切りの茶事」というものがあり、春に摘んだお茶を冷暗所で保管しておいたものを、秋に開封し飲む伝統があり、それらは「新茶のとげとげしさがなくなり、その結果まろやかな旨みが強調されたものになる」、とされる。
このことから煎茶でも「夏を越えたのが通の味」と言われているように見える。

だが、煎茶の場合、例えば「秋の口切り」で検索してみると分かるが、「零下30度で真空保管されたもの」が「秋の口切り」として売られていたりして、それだったら単に「新茶の保存」という意味合いのほうが強いのではないかという気もする。
良いものを秋に出すところが多いので、品質の良さが鮮度の劣化を上回っているという気がする。

(ちなみに、そのような批判に応えるべく、高地の蔵のような冷暗所で壷に入れて保管の上、秋以降に出してくるという煎茶も、ごく稀に存在する。これは確かに独特の円やかさを感じた。が、大部分のお茶はそうではない。)

また、新茶の味(作り方)は今昔でかなり違う(昔の新茶はもっと青々とした味であった)ので、秋まで寝かせる意味合いというのも今昔では全く違うはずなのだが、そういう文脈はどこへいってしまったのだろう?

  • 煎茶と抹茶の文化を混同している
  • 煎茶の作り方と保存法が今と昔で異なるのを無視している
  • 「秋のお茶が通」という固定観念が先に来ている

という場合が多いように思えてならない。



秋に摘まれたお茶

また、上記のような「春に摘まれて秋に出てくるお茶」ではなく、「本当に秋に摘まれたお茶」ももちろん存在するが市場価値は低いのが現状である。

紅茶では秋に摘まれた「オータム・ナル」というものもあり一定の評価を得ているし、日本茶でも秋に摘まれたお茶を伝統的には「番茶」として飲んできたところも多々あるので、可能性はあるかもしれない。

お茶は米のような種ではなく葉っぱなので、春摘みのお茶しか飲まないことのほうが、歴史的には不自然と言えるだろう。



秋のお茶は「火香」に注意

品評会に出すようなお茶とは別に、秋に多くなるお茶がある。
それは、火入れを強くしているものだ。

「月見茶」のように銘打っているところもあったが、あるお茶屋さんでは同じ銘柄でも無言で秋・冬は火香を強くしていた
そのお茶屋さんに問い合わせたら、「秋、冬は、火入れを強くしている」という回答をいただいた。

もちろん、品評会に入賞するような高級品には、お茶本来の味が分かりにくくなるので、そういうことはしない。

一般に「狭山火入れ」(強い火入れが特徴)という言葉があるが、狭山茶でも、品評会に出るようなものは、そうしたものとは全く別の作り方をしている。

寒い季節=強い火香というのも分かるが、例えば、火香が強い蒸し製緑茶だけではなく、釜炒り茶(釜香)をそういうシーンでの飲用に薦めてみてはいかがだろうか、と思う。

2011年10月9日日曜日

[番外編] 台湾・天圃茶荘の高山烏龍茶

自分が知る中ではとても美味しい凍頂烏龍茶である。
華やかな香りと上品な甘みがあり、高級品と感じさせる。

調べてみたところ、2008年の価格では150グラムで1200元(約4200円)だったとの記載をネットで見つけた。

また、「徐さんは自分の舌で味を確認するため、お酒も煙草も香辛料の入ったお料理も召し上がりません。ニンニクの入った美味しいお料理も食べられないんですよ。」ともある。

http://community.travel.yahoo.co.jp/mymemo/syakatou/buzz/21850.html

そういえば、神保町のティーハウス・タカノの高野さんも、味が濃すぎて珈琲が飲めないと仰っていた。

この天圃茶荘さんは、日本語のサイトをお持ちで、ブログで大震災のお見舞いを書いてくださったりしている。

http://blogs.yahoo.co.jp/tienpuutea2009

「阿里山茶葉男」を名乗っておられるので、この高山烏龍茶も阿里山のお茶なのかもしれない。
が、阿里山金萱のようなミルキーな感じではなく、花のような、より上品で華やかな味である。
ブランデーで言うならポール・ジローの35年!

台湾を訪れる際は是非お店を訪問してみたいものだ。

『お茶は世界をかけめぐる』高宇政光著、筑摩書房刊、2006年

煎茶の歴史が書かれた物としてこれを上回る内容のものを知らない。

社会学において、日本の伝統とされていたものが実は明治以降の近代に作られたという、「伝統の創出」という概念があるが、これを思い出した。

煎茶は、アメリカや北アフリカなど、その時代その時代の消費者に向け発展してきた経緯があり、江戸時代からある煎茶ではあるが、多くの日本人が日常的に飲むようになったのは、実は1960~1970年代あたりとさえ言える。それまでは番茶。

この考え方を骨子に、沢山の資料を駆使し、「日本茶の近代史を書き換えようという意気込みで」書かれたのが本書。
日本茶ファン必読の書。

2011年9月8日木曜日

茶舗 多与安 玉緑茶(蒸しグリ)と釜炒り茶

「玉緑茶」「蒸しグリ」で名高い茶処・嬉野を訪問する機会があり、宿の近くに美味しそうな店があったので購入してみた。

「茶舗 多与安」さんは、お店のすぐ裏が製茶場になっている。
店内には、茎茶(白折)や粉茶もあり、端物も粗末にしない、自家製茶ならではの品揃えに感銘を受けた。

100gあたり1,000円と1,500円の茶葉を見せていただいたところ、かなりの違いを感じた。
(ちなみに1,200円や1,000円未満も色々ありました)

1,500円のほうが緑が濃く、高級茶葉独特の繊細な香りがする。
味は、炒った香ばしさが控え目で、九州北部の高級茶葉の良さが引き出されている。八女にも通じる茶葉の味である。

見た目は、よく見る「玉緑茶」(蒸しグリ)に比べて、あまり丸まっていない。
「玉緑茶」にしては、見た目、味ともに、普通の煎茶に近い。
炒る工程が少なめなのかもしれない。

玉緑茶の1,000円のほうは、酸味もしくは香ばしさを感じるというか、ややワイルドな味であった。

むしろ味が面白かったのは釜炒茶のほうで(100g800円)、よくあるパサパサで老ねたような味とは別物で、お茶の味わいがしっかりしており、釜炒り独特の炒った味の奥に、滋味というか上品さを感じさせる味作り。
茶葉を見ると、玉緑茶よりは丸まっているが、一般の釜炒り茶よりも丸まりが控えめのように見える。


嬉野を訪れてみると、山間に茶畑や稲があり、あまり大規模化せず丁寧に作っていることを感じさせる。
嬉野の玉緑茶に開眼させられた思いである。

「茶舗 多与安」さんは、サイトで通販などはされていないようであるが、特に1,500円の玉緑茶と800円の釜炒り茶は、通販でも購入する価値があると感じたため、お願いしてみたところ、親切に対応いただき、届いたお茶の品質も変わらず素晴らしかった。
来年以降も折にふれて購入したい。

ふらっと訪れたお茶屋さんがここまで美味しかったりすると、お茶の奥深さにあらためて感動させられる。

ちなみに、泊まった旅館にも嬉野茶のコーナーがあり、販売員さんが立ち試飲もできるほど力の入れようだったが、包装ばかりきらびやかで味は・・・みやげ物によくある事そのものであった。


・嬉野の他のお店(たくさんあった)はどうなのか?

・全国の茶処に、このように隠れた実力店があるのか?(あるなら味わってみたい)


興味は尽きない。