2019年12月3日火曜日

品評会で圧勝する「カネタ太田園」の通常価格帯のお茶

久々に全国茶品評会の成績を見てみたら、普通煎茶4kgの部で、

一等一席(農林水産大臣賞)天竜茶研究会 太田昌孝
一等二席(農林水産省生産局長賞)天竜茶研究会 太田勝則
一等三席(日本茶業中央会会長賞)天竜茶研究会 太田美咲

とあった。

https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/306644.pdf

何と、太田昌孝さん(79)、娘婿の太田勝則さん(56)、孫の太田美咲さん(31)の一家で上位独占である。

ちなみに昨年も太田昌孝さんが一等一席、一昨年は太田勝則さんが一等一席であったようで、スーパー家族である。

参照
https://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/675650.html

こちらは浜松市天竜区の「カネタ太田園」さんのご家族のようで、問い合わせてみると何とも謙虚なご一家であった。

「品評会入賞茶」は80gで5,000円~30,000円とのこと。

ワインを飲んだら少し良いものでも年の浅いものでも一本10,000円ぐらいするし、数十万円するものもある。しかもすぐに飲み終わってしまう。
世界一の蒸製緑茶が80gもあったら、たとえ30,000円でも全く高価ではないし、金儲けに走らない日本人らしい、何とも控えめで素晴らしい相場感である。


一先ずその優勝茶ではなく、通常ラインの1,000円、1,500円、2,000円/100gのものを飲ませていただいた。

茶葉は1,500円(+税)以上のものは手摘みのようだ

2,000円の物(「天下一」)は香りが多いが、かなり似ているので1,000円の物はお買い得である。

いずれも肥料的な旨みは少なく、自然な旨みなのが凡百のお茶との相違。

ただとにかく火入れが弱いため、2杯目からは特に苦みえぐみが出やすい。軟陶の器で甘味を出しながら飲むとバランスが取れた(軟陶の器は渋味が減り相対的に甘味が立つというのは実験で明らかになっている)。

こちら「カネタ太田園」さんや「高畑園」さんもそうだと感じたが、力の入った生産家さんのお茶で極端に火香を嫌ったような製茶がしばしば見受けられるが、やり過ぎると湯温の影響が大きく、すぐにえぐみが出てしまい、安定して淹れるのが非常に難しい。
特に旨み成分のあまり多くない100g1000円程度のお茶はえぐみが目立つ傾向にある。

5000円の茶葉を一回だけ淹れるのなら美味しいのかもしれないが、茶葉が違う。
1000円の茶葉を5000円の茶葉と同じように製茶するべきではないし、「火入れを弱くすることが茶通」という俗な通念に捉われない製茶をお願いしたい。

2019年9月30日月曜日

正統派だが――こやぶ園茶舗

川根のこやぶ園茶舗さんのお茶

「『川根茶』は伝統普通蒸し製で、香り、滋味が特徴です。創業72年のこやぶ園では、時間をかけ 優しい火入れをし、同一銘柄を同じ茶葉で作り、一年中おいしさをお届けすることで好評を得ています。」

とのこと(「川根茶ポータル」さんのサイトより)。
非常に期待ができる素晴らしい文言。

「川根茶ポータル」さんの分類では、生産家ではなく仕入れて販売しているお店のようだが、なおさらバランスや品質管理に期待できる(「生産家直売のお茶が美味しくないことが多い理由」)。

購入してみると、オーセンティックなお茶作りでとても素晴らしかった。
川根茶らしい香気と、静岡茶の少し角のある渋味も適度にあり、バランスが良い。
「若芽 赤ラベル」1,200円に比べて、一段階高い「若芽 青ラベル」1,500円のほうが明確に旨みが多いのだけれど、その旨みはやや肥料的なものに偏り気味なのが気になるところ。
もしかしたら前者のほうが茶通のお茶かもしれない。

茶葉はどちらも黒みがかり細目に撚られた素晴らしい外観で、鮮度の品質管理も文句無しに良い。
実力派の素晴らしいお店に出会えたことに感謝したい。

2019年6月24日月曜日

香りが飛びやすいが割安――新生わたらい茶「手摘み」1500円+税

今年の新生わたらい茶さんのお茶を最初に飲んだ時は「これは最高傑作か!」というくらいの衝撃だったが、なぜか余所の新茶に比べて香りが飛ぶのが早く、特に「初摘み」(1200円+税)は程なくして香りが消失してしまった。
「手摘み」(1500円+税)は、まだ香りが少し長持ちしてくれているように感じる。

この価格で手摘み、無農薬は、良心的で、生産者直売ならではの強みだ。

「生活クラブ」で買うと、「八十八夜」の時期のもので、50gで800円だった(ただし生活クラブ用には同時期の「八十八夜」でも別の茶葉を用意しているのだそうで、仕上げも異なる)。

蒸しは普通蒸しと深蒸しの間くらいか。

個人的には三重・熊野の軟水に合わせて飲むのが気に入っている。

2019年6月23日日曜日

スペックは素晴らしいがもうひと超えほしい――青鶴茶舗 鹿児島煎茶 霧島 さえみどり

「フランス人初 日本茶インストラクター」のお店、青鶴茶舗。
急須(/宝瓶/しぼり出し)の品揃えは見事で、東京都内のお茶屋さんと陶器店を入れても五指に入るのでは?と思う。

鹿児島煎茶 霧島 さえみどり 50g 1,500円
嬉しい税込だが、100gで3,000円相当の高級品。
「有機」で「手摘み」とのこと。

外観は上々。
水色は黄色~黄緑がかっている。
毛耳(もうじ)の多さに驚く。
香りや旨味はあるのだがたしかに茶葉の量に対して味が薄く、やや単調で、非常に渋味が少ない。今年の鹿児島のお茶の傾向なのだろうか。

有機、手摘み、そして外観などの「スペック」は凄いが、100g 3,000円ならばもう少し癖でもいいから何か迫りくる香りや味が欲しいようにも感じた。

2019年5月9日木曜日

渋味極少ながら――生仕上げ新茶 ゆたかみどり

昔の新茶の味を再現するため、仕上げ乾燥をしない製法で作られたお茶。
もちろん普通蒸し。

毎年、ジューシーだが、むせ返るようなえぐみはなく、飲みなれていない人が飲んでも多くの人が美味しいと言う。

今年は例年より特に渋味雑味が少なく、より旨みに偏っているのではないか?
そのせいか香りや味は薄めで少し閉じたようなところがある。
茶葉を多くし、湯の温度を高めにして、ちょうどバランスが良くなるように感じた。

昨年に比べ複雑味がやや及ばぬものの、他の新茶よりも開封後もジューシーな香りが残る安定感はさすが。

今年もこのお茶を飲めたことに感謝。

2019年4月23日火曜日

高級茶向きの製茶――高畑園 八十八夜

100g1000円+税
「浅蒸し」を標榜するだけに、蓬莱堂さんの新茶とまではゆかないが新茶前の時期としては異例なほどえぐ味ともいえる渋味苦みのある面白いお茶。

品質管理は鮮度あり素晴らしいと特筆できるレベル。
茶葉の外観も良し。

旨み成分に頼らない複雑な味を目指していることが伝わってくるが、もっと旨みの多い茶葉に向いた製茶をしているようにも感じる。

湯の温度をかなり下げたときの一淹目は美味しいが、二、三杯目まで美味しく淹れるのは難しい。

もう少しだけ茶葉に合った製茶があり得る気がしたが、製茶の丁寧さ、保管の良さなどから、茶葉への愛情が伝わってきて、記憶に残った。
好みはあると思うが、100g 1,080円は安いといえるだろう。

箱物行政を思い出す――櫻井焙茶研究所

コンクリート打ちっぱなしの洒落た内装で立地は表参道のスパイラルビル。
一時期マスコミにたくさん登場していた店。

お店にあった急須のことを訊いたら新人らしき子に「検索してみてください」と言われた。
知識が無い上に客に検索させるスタイル。
他のスタッフも手助けせず、個人というよりお店の姿勢と教育の問題だろう。

店のメニューには番茶や日本茶Award入賞茶もあったが、少し訊いても一切話が発展しなかったので、これが哲学の言う「存在しない」ということかと苦笑。

お金を払い店内で京都のお茶を飲んだが、茶葉としては販売していないとのこと。

バブル時代に、ホールや庁舎など立派な箱物ばかり揃えてソフトが足りないことが問題になったが、平成も終わるという日本の民間企業でもこういう箱物は生まれていた。

茶葉の値段が余所の1.5~2倍ぐらいに見えたのは、表参道だから自分は良いと思う(もし接客が伴っているなら)。
2018年12月~2019年1月ごろ訪問

深蒸しも良いと思ったが酸味を感じた――駿河園茶舗 100g 1000円と1200円のもの

深蒸しの川根茶。
火香は少なめで、二回三回と美味しく、深蒸しでも良いかなと思えた。
保存は厳格でなく、酸味あり。
新茶になったらまた飲んでみたい。

爺さんの「普段余所で100g1000円のお茶を飲んでいるなら、うちでは300円だ!」の啖呵が微笑ましかった。
「なぜならうちは静岡の問屋だから」 とのことだが、東京にはそういう問屋の二男坊が出てきて開いたような店が本当にたくさんあるのだ。
どこも高齢化著しいのが寂しい。

2019年1~3月購入

旨み成分祭――日本茶テロワール 「茶師十段 前田文男氏」ブレンド

愛国製茶 日本茶テロワール
「茶師十段 前田文男氏」ブレンド
100g 1500円くらい
たしか知覧と高知のお茶をブレンドしていたような

火入れはそこそこ
保存は上々
肥料的「旨み」が非常に多い。ほとんど鹿児島か。

「茶師○段」 を前面に出したものに好みのものは無し、の記録を更新した。

生産家らしい酸味?――樽脇園 特上煎茶 1650円/100g

蒸しは浅いが酸味を感じる。
袋は空気の入るタイプで保存に課題あり。
茶葉はそこまで選別せず野趣を追求か?しかし正直酸味でよく分からなくなっている。
1650円/100gしたのに勿体ない。
満月や新月で摘み分けるなどしその薀蓄を語られているが、そんなことよりもまず保管に力を入れたほうが、総合的にはよほど味は改善すると感じた。
2019年2月