2016年2月19日金曜日

今年度はもうほかのお茶は要らない?――蓬莱堂「常盤木」

蓬莱堂茶舗「常盤木」(2,150円)は、同店通常ラインナップの煎茶の中では最上位のものになる。

この上をゆく「出品茶 上」(3,250円)、「出品茶」(2,750円)は、普通に考えたらブレンドしていないと思われるが、通常品の「常盤木」以下は味を保つためにブレンドしているかもしれない。
であれば、「常盤木」以下にこそよりお店の味が色濃く出ているかもしれない。

外観は、絵に描いたような高級煎茶そのもので、黒味がかって、細長く撚られたもの。
前回書いた「一保堂」さんの「嘉木」よりも遥かに典型的な高級煎茶の姿(なり)をしている。

味はもう完璧の域で、旨みの周りに葉の味が重層的に広がる。

アミノ酸的旨みだけではなく、葉の複雑な味がバランスよく混ざっているところが蓬莱堂さんのお茶の真髄であると思う。

残念ながらほとんどのお茶は、肥料過多によりアミノ酸的な旨みばかりが突出してしまったり、反対にナチュラル志向のものはパサパサで渋みばかり突出したり、あるいは、火入れしすぎてその香りばかりが突出したり、どこからしらが立ってしまいがちだが、このお茶はそのようなところが無く、本当にバランスが良い。

そして、今年度のこの「常盤木」も、黒味がかった茶葉に見られる木の実のような味も。

渋みは一般的な静岡茶より少ないものの、「一保堂」さんの「嘉木」よりはあるので、同じように絞り出しで玉露を淹れるようなやり方をするとさすがに渋みが目立つ。
小さめの急須が向いているかもしれない。

今まで飲んだ今年度産の煎茶の中では断然完成度が高いと感じた。

無農薬を除いたら、今年度はもうこのお茶で打ち止めでも良いかもしれない、と思うほど。
もし、これから「良い煎茶がどういうものか知りたい」という人がいたら、このお茶をお勧めしたい。

できることなら、窒素の害から自由になったお茶や無農薬のお茶を売るということにも、より力を入れていただけたらと思う。

2016年1月14日木曜日

淡い味を最上位に据える矜持――一保堂「嘉木」

一保堂さんの煎茶でも通常ラインアップ中では最高級に位置する「嘉木」。
言うまでも無く茶経から引用したと思しき名である「嘉木」だが、一保堂さんは喫茶店にも同名を付けており、この語への愛着を感じる。

茶葉を見ると、そこまで針状には揉んでこそいないものの、若い芽がふんだんに入っている。
淹れてみると、若い芽らしく、渋みの少ない淡い味。
香りは華やか過ぎずあくまで落ち着いている。
また、ある程度しっかり乾燥させている。

下級煎茶をガブガブ飲むような淹れ方では、全く真価を発揮できない。
絞り出しを使い、高級煎茶に相応しい淹れ方をすると、俄然魅力を見せる。
エキス的になったときに初めて、このお茶の渋みの少なさが意味を持つ。
ただ、蓬莱堂さんのお茶のような茶葉の重層的な旨味は、「嘉木」にまだ欠けている点か。

それでもこの澄んだお茶を前にすると、「中嶋農法のお茶」はアミノ酸的旨みに偏りすぎていて肥料のやり過ぎと火香が気になってしまうほどだ。
価格が全く違うとはいえ、別世界の味である。
この淡く澄んだ茶葉を通常のラインアップの最上位に持ってくることに敬意を表したい。

2016年1月9日土曜日

昔、先入観にあった「有機」の風味 有機一番摘み 月ヶ瀬煎茶

気になっていた奈良県の有機栽培茶。
「農薬不使用の・・・」ではなく、ちゃんとJAS有機認証を受けている。

茶葉は大きく育った葉が茎までしばしば入っているので一針二葉の味とはほど遠い。

何より、とにかく乾燥させているので、酸っぱいといえるほど渋くなっている。

私が有機栽培のお茶をよく知る前に抱いていた先入観そのもののようなお茶。

有機栽培とこういう仕上げ方はセットになりがちであるという現実を見ると、多くの消費者が有機栽培のお茶というものに対して思い浮かべそうなものを忠実に体現しているといえる。

2015年12月12日土曜日

意外と「旨み」多し 百年乃茶

百年乃茶 かねき伊藤彦市商店

三重の百年以上経つ在来種の樹から摘んだお茶だそうである。

在来種を売りにしたお茶にありがちな、荒茶っぽい外観をしているのだが、飲んでみると意外とアミノ酸の旨みが多い。

もしかしたら、「在来種」「百年以上」を前面に押し出しているものの、作り方としては実はたっぷり肥料を与えられているのではないか?という印象を抱いた。
もちろんそのことは書いていない。

ただ、これが無かったらよくある有機栽培のようなパサパサな味になりかねないので、この場合はありだと思う。

2015年12月9日水曜日

ついに昨年に劣らぬ茶に出会う 中嶋農法のお茶 平成27年産

鹿児島県知覧市 古屋五男さん製造


昨年とても印象が良かったが、本年度産もとても良かった。
もしかすると昨年以上かもしれない。

普通蒸しと深蒸しの中間くらい。

瑞々しく、ミル芽香でも覆い香でもない、青々とした葉の香りが口の中いっぱいになる。

火香やアミノ酸的旨みはやや目立つが、青々とした香りの良さが上回る。

知覧町のお茶らしく、葉の渋みは少なくまろやか。

今年飲んだ中で、同銘柄で昨年より不味くなっていないお茶についに出会った。


お茶に有効な「中嶋農法」


中嶋農法は、中嶋常充氏が提唱する作物の栽培方法で、土壌診断により土に足りないもの(肥料)を施し、過剰なもの(肥料)減らし、植物本来の強さを引き出そうとするものだそうだ。

今までの農業は「窒素」「リン酸」「仮」の三大要素ばかりが重視され、ミネラル不足になっていたという。
逆にこの三大要素が過剰摂取されたわけだが、特に「硝酸態窒素」は農薬よりも危険とも言われており、
三重県農業研究所によると、
http://www.mate.pref.mie.lg.jp/marc/tanpo/50/5015.PDF
「茶の窒素施肥量は農作物の中で最も多く、茶園地帯では地下水の硝酸汚染が懸念されています。」
とのこと。

つまり、硝酸が過剰になりやすいお茶の世界で、中嶋農法は特に威力を発揮すると見ることもできるわけである。

2015年11月10日火曜日

2015年10月11日日曜日

ミル芽香と渋みが一体になった分かりやすさ――相藤農園「一番摘み」

沢山の品評会受賞歴を誇る相藤農園の川根茶。
その「一番摘み」である。

「一番摘み」とあるが、こちらは「5月上旬に収穫されたお茶」(1080円/100g)だそうで、

実際は更に
  • 「初摘み」:4月末から5月初旬に特に良い茶園の最初に収穫された最もみる芽(若い芽)のお茶(2000円/100g)
  • 「大はしり」:5月初旬に良い茶園で収穫されたお茶(1500円/100g)
  • 「八十八夜摘み」:5月初旬の八十八夜の頃に収穫されたお茶(1200円/100g)
が上の価格帯=早い茶摘み時期に鎮座する。

「一番摘み」と「初摘み」の違いが紛らわしい!
「『初』という意味ではなくて、『一番王道の時期』ということで・・・」ということであろうが、気になる表現である。

それでも、この「一番摘み」も封を開けた瞬間に、ミル芽の香りが溢れてくるのは見事としか言いようが無い。
近年、100g1000円のお茶で、この香りにはなかなかありつけない。
というか、新茶の時期に新茶を買ってもこの香りを持ったものが少ない。
その点こちら相藤農園さんのお茶は、素晴らしい鮮度保持ができているということである。

ただ、葉の渋みというか苦味も同時にかなり感じるお茶で、よくイメージされる静岡らしいお茶といったところであろうか。
ミル芽の香りと苦味渋みが渾然一体となって押し寄せてくる、分かりやすさ持ったお茶と言えるだろう。

乾燥もしっかりさせていると思うが、やりすぎの手前できちんと止めているように思う。