2011年5月23日月曜日

セシウムの公表状況がおかしい

足柄茶からのセシウム検出を受け、他の産地でもデータが出てきました。
ただ、いくつか、かなりおかしい点があります。

もともと、セシウムが話題になったのは、「生葉」の状態です。

これのほかに、大きく分けて、精製した「製茶」、お湯に出した「抽出液」の状態が考えられます。


精製した完成品を「製茶」と呼ぶのはおかしいと思います。
本来はお茶を製造・加工することを「製茶」と呼ぶように思います。
が、メディアで完成品を「製茶」と呼んでいるのが多かったので、今回は完成品を「製茶」と呼んで記することにいたします。


(1)「製茶」での数値公表を拒否(静岡、神奈川、埼玉)

実際に売られる茶葉は、「生葉」を乾燥などして精製しますが、その過程で更にセシウムは凝縮されるといわれています。
一説によると5倍前後とか。
したがって「生葉」で規制値越えかぎりぎりくらいのものだと、それを「製茶」にしたら、出荷できないものが続出することが予想されます。

そのため、厚生労働省は「荒茶」(精製の初期段階のようなもの)の検査とその値の公表を求めていますが、拒否する地域が続出。
静岡、神奈川、埼玉などが拒否しています。

たとえば、お菓子メーカーが、原材料のカカオの検査はOKだけれど、実際のお菓子の検査は拒否する、と言っているようなものです。
話にならないと思います。


(2)「抽出」の仕方がおかしい

お茶を作って飲まれるまでの順序としては、

生葉→荒茶→製茶(一般に売られている煎茶など)→お湯で出して飲む

という経路を辿ります。
しかし、たとえば狭山茶(埼玉)などの記事を読むと、

「これらの生茶葉を乾燥させて湯に入れ、抽出した飲用茶からはセシウム、ヨウ素いずれも検出されなかった。」(産経新聞、5月14日)

とあります。
つまり、この報道が正しいとすれば、一般に売られている煎茶の精製過程を経ていないものを検査しているということになります。
生葉を単に乾燥させてお湯に入れている。

※ただ、産経新聞の担当者が工程を理解していないだけ、という場合もあり得ます。

お茶業界関係者が「お湯で出すと全く問題ない数値」と言っていますが、実際のところ実験方法がフェアとは言えないので、信憑性が低い。

たとえば、普通に売っている煎茶を急須で入れたら、細かい茶葉がお湯にたくさん出ます。
関東で流行っている深蒸しなどは特に茶葉が細かいので、そういう傾向が強い。
しかし、やり方によっては、そんなに細かい茶葉がお湯に出ないように淹れることもできるので、実際に飲まれるお茶の「抽出」と、実験の「抽出」とでは、全く違ったものにもなり得ます。
少なくとも、茶葉の細かさや茶漉しに関する情報が無い

それを、「抽出」という言葉を一人歩きさせて混同させるという手法を用いて、「お湯で出すと全く問題ない数値」と言っているだけに見えます。


(3)数値がおかしい

足柄など、いくつかの自治体を見てみると、「生葉」の値の5%前後のセシウムが「抽出」(お湯の入ったお茶)から検出されていることが多かったのですが、埼玉の値だけ、「生葉」は基準値をぎりぎり下回っていて、「抽出液」は全てゼロでした。

埼玉だけ、お湯にいれるとセシウムが消えるのでしょうか。
そんなはずはありませんよね。

おそらく(2)のように、抽出方法が違うのでしょう。
粉が入らないように、これでもかというくらい細かい茶漉しを通しているかもしれません。



以上、(1)(2)(3)のように、おかしい点が非常に多い。

これでどういうことが起こるか。
一つは、気づいた人たちが日本茶業界に不信感や嫌悪感を抱き、お茶離れにつながることでしょうね。
実際、かなりのお茶ファンである私も、きちんと公表しない地域のお茶は怖くて買えません(公表している産地のお茶は購入するつもりですが)。
目先のごまかしのために、今後数十年の顧客を失っている。そのようなことをしていたらお茶の未来は暗いといえるでしょう。

そもそも、お茶生産者は被害者なのに、なぜ隠蔽しようとするのでしょうか。堂々と数値を公表し、東京電力に賠償を請求するべきです。
隠蔽してまで国民に危険なものを売ろうとしているために、お茶業界が国民から加害者とみなされつつあるのを見るのは悲しい限りです。


もう一つは、お茶をはじめ農作物、畜産物でこのようなごまかしが多いと、何が入っているか分からない「外食」から足が遠のくことになります。
実際外食業界は壊滅的な被害を受けています。
外食産業は、自分たちのためにも、もっとデータの公表を訴えるべきでしょう。


単純な話、厚生労働省などが、「狭山茶」「静岡茶」などとして売られている今年の煎茶を購入して、煎茶の状態と、お湯にいれたとき(「抽出」)の状態の数値を検査すればよいのに、なぜやらないのでしょう。

いや、それを行う団体がほどなくして出てくるでしょう。
そして、お茶業界の出した数値との違いに大きな批判が起こったとき、お茶業界は国民から完全に加害者とみなされるでしょう。
そうなる前に、自らしっかり情報を出して、加害者にならないでほしいものです。

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