足柄茶からのセシウム検出を受け、他の産地でもデータが出てきました。
ただ、いくつか、かなりおかしい点があります。
もともと、セシウムが話題になったのは、「生葉」の状態です。
これのほかに、大きく分けて、精製した「製茶」、お湯に出した「抽出液」の状態が考えられます。
※
精製した完成品を「製茶」と呼ぶのはおかしいと思います。
本来はお茶を製造・加工することを「製茶」と呼ぶように思います。
が、メディアで完成品を「製茶」と呼んでいるのが多かったので、今回は完成品を「製茶」と呼んで記することにいたします。
(1)「製茶」での数値公表を拒否(静岡、神奈川、埼玉)
実際に売られる茶葉は、「生葉」を乾燥などして精製しますが、その過程で更にセシウムは凝縮されるといわれています。
一説によると5倍前後とか。
したがって「生葉」で規制値越えかぎりぎりくらいのものだと、それを「製茶」にしたら、出荷できないものが続出することが予想されます。
そのため、厚生労働省は「荒茶」(精製の初期段階のようなもの)の検査とその値の公表を求めていますが、拒否する地域が続出。
静岡、神奈川、埼玉などが拒否しています。
たとえば、お菓子メーカーが、原材料のカカオの検査はOKだけれど、実際のお菓子の検査は拒否する、と言っているようなものです。
話にならないと思います。
(2)「抽出」の仕方がおかしい
お茶を作って飲まれるまでの順序としては、
生葉→荒茶→製茶(一般に売られている煎茶など)→お湯で出して飲む
という経路を辿ります。
しかし、たとえば狭山茶(埼玉)などの記事を読むと、
「これらの生茶葉を乾燥させて湯に入れ、抽出した飲用茶からはセシウム、ヨウ素いずれも検出されなかった。」(産経新聞、5月14日)
とあります。
つまり、この報道が正しいとすれば、一般に売られている煎茶の精製過程を経ていないものを検査しているということになります。
生葉を単に乾燥させてお湯に入れている。
※ただ、産経新聞の担当者が工程を理解していないだけ、という場合もあり得ます。
お茶業界関係者が「お湯で出すと全く問題ない数値」と言っていますが、実際のところ実験方法がフェアとは言えないので、信憑性が低い。
たとえば、普通に売っている煎茶を急須で入れたら、細かい茶葉がお湯にたくさん出ます。
関東で流行っている深蒸しなどは特に茶葉が細かいので、そういう傾向が強い。
しかし、やり方によっては、そんなに細かい茶葉がお湯に出ないように淹れることもできるので、実際に飲まれるお茶の「抽出」と、実験の「抽出」とでは、全く違ったものにもなり得ます。
少なくとも、茶葉の細かさや茶漉しに関する情報が無い。
それを、「抽出」という言葉を一人歩きさせて混同させるという手法を用いて、「お湯で出すと全く問題ない数値」と言っているだけに見えます。
(3)数値がおかしい
足柄など、いくつかの自治体を見てみると、「生葉」の値の5%前後のセシウムが「抽出」(お湯の入ったお茶)から検出されていることが多かったのですが、埼玉の値だけ、「生葉」は基準値をぎりぎり下回っていて、「抽出液」は全てゼロでした。
埼玉だけ、お湯にいれるとセシウムが消えるのでしょうか。
そんなはずはありませんよね。
おそらく(2)のように、抽出方法が違うのでしょう。
粉が入らないように、これでもかというくらい細かい茶漉しを通しているかもしれません。
以上、(1)(2)(3)のように、おかしい点が非常に多い。
これでどういうことが起こるか。
一つは、気づいた人たちが日本茶業界に不信感や嫌悪感を抱き、お茶離れにつながることでしょうね。
実際、かなりのお茶ファンである私も、きちんと公表しない地域のお茶は怖くて買えません(公表している産地のお茶は購入するつもりですが)。
目先のごまかしのために、今後数十年の顧客を失っている。そのようなことをしていたらお茶の未来は暗いといえるでしょう。
そもそも、お茶生産者は被害者なのに、なぜ隠蔽しようとするのでしょうか。堂々と数値を公表し、東京電力に賠償を請求するべきです。
隠蔽してまで国民に危険なものを売ろうとしているために、お茶業界が国民から加害者とみなされつつあるのを見るのは悲しい限りです。
もう一つは、お茶をはじめ農作物、畜産物でこのようなごまかしが多いと、何が入っているか分からない「外食」から足が遠のくことになります。
実際外食業界は壊滅的な被害を受けています。
外食産業は、自分たちのためにも、もっとデータの公表を訴えるべきでしょう。
単純な話、厚生労働省などが、「狭山茶」「静岡茶」などとして売られている今年の煎茶を購入して、煎茶の状態と、お湯にいれたとき(「抽出」)の状態の数値を検査すればよいのに、なぜやらないのでしょう。
いや、それを行う団体がほどなくして出てくるでしょう。
そして、お茶業界の出した数値との違いに大きな批判が起こったとき、お茶業界は国民から完全に加害者とみなされるでしょう。
そうなる前に、自らしっかり情報を出して、加害者にならないでほしいものです。
2011年5月23日月曜日
2011年5月14日土曜日
足柄茶から基準値越えセシウム検出
足柄(神奈川)の茶葉から基準値越えのセシウムが検出されたとニュースになっております。
いくつか論点を書きたいと思います。
1.他の産地は大丈夫?
足柄は偉いと思います。自主的に検査を行い、基準値越えしたものは早々に出荷停止措置を取りました。
みんなが気になっているのは、他の産地はどうかということでしょう。
足柄は神奈川でも南にあり、もうすぐ静岡県という地区です。
日本最大の緑茶産地である静岡はどうなのか?
より北=福島寄りである埼玉の狭山茶はどうなのか?
さらに、チェルノブイリのときも地球を2周して放射性物質が降ってきた、という話もありますので、日本全国のお茶を検査してほしいものです。
2.煎茶にすると、そしてお湯で淹れるとどうなるのか?
足柄で基準値越えしたのは生葉です。
煎茶にして飲むと、セシウムの量はかなり減るというデータもあるとか。
ただ、平常時にセシウムでそんな実証実験を十分にやっているとは考えにくいものです。
是非、データを取り直して早急に発表してほしいと思います。
たぶん、放射性物質は減ると思いますので、その場合は、必要以上の風評被害を防止することにもつながります。
煎茶にした状態と、お湯に出してお茶を入れた状態のデータが必要です。
特に、お湯に出すときの濃さは、人によってかなり違いがあり、お茶屋さんなど業界関係者は一般に比べてとても濃く出す傾向があります。
ここは公正に、業界関係者が出すような濃さできちんと検査してほしいところです。
また、普通蒸しと深蒸しでも違うことでしょう。
3.他の農産物はどうなのか?
本ブログのテーマ外とはなりますが、人として勿論、お茶以外の農産物もできる限り検査してほしい、という気持ちがあります。
お茶の新芽には特に溜まりやすいという記事もありました。
野菜は、葉、芽、根、種など、我々はものによって摂取している部分が違いますよね。
きちんとデータを取ることで、どういう食物のどういう部分をとったら良いのか、だいたい判ってくるでしょう。
4.基準値の設定はどうなのか?
これもずいぶん話題になってきたことだと思いますが、そもそも基準値の設定がどうなのか、絶えず見直してほしいと思います。
国際的に見て甘いという意見などもいろいろあります。
今回のニュースでいえば、足柄茶も、「基準値」を下回ったものは出荷をやめないとのことです。
水と同様に、年齢によっても「基準」は変わってくるでしょう。
いくつか論点を書きたいと思います。
1.他の産地は大丈夫?
足柄は偉いと思います。自主的に検査を行い、基準値越えしたものは早々に出荷停止措置を取りました。
みんなが気になっているのは、他の産地はどうかということでしょう。
足柄は神奈川でも南にあり、もうすぐ静岡県という地区です。
日本最大の緑茶産地である静岡はどうなのか?
より北=福島寄りである埼玉の狭山茶はどうなのか?
さらに、チェルノブイリのときも地球を2周して放射性物質が降ってきた、という話もありますので、日本全国のお茶を検査してほしいものです。
2.煎茶にすると、そしてお湯で淹れるとどうなるのか?
足柄で基準値越えしたのは生葉です。
煎茶にして飲むと、セシウムの量はかなり減るというデータもあるとか。
ただ、平常時にセシウムでそんな実証実験を十分にやっているとは考えにくいものです。
是非、データを取り直して早急に発表してほしいと思います。
たぶん、放射性物質は減ると思いますので、その場合は、必要以上の風評被害を防止することにもつながります。
煎茶にした状態と、お湯に出してお茶を入れた状態のデータが必要です。
特に、お湯に出すときの濃さは、人によってかなり違いがあり、お茶屋さんなど業界関係者は一般に比べてとても濃く出す傾向があります。
ここは公正に、業界関係者が出すような濃さできちんと検査してほしいところです。
また、普通蒸しと深蒸しでも違うことでしょう。
3.他の農産物はどうなのか?
本ブログのテーマ外とはなりますが、人として勿論、お茶以外の農産物もできる限り検査してほしい、という気持ちがあります。
お茶の新芽には特に溜まりやすいという記事もありました。
野菜は、葉、芽、根、種など、我々はものによって摂取している部分が違いますよね。
きちんとデータを取ることで、どういう食物のどういう部分をとったら良いのか、だいたい判ってくるでしょう。
4.基準値の設定はどうなのか?
これもずいぶん話題になってきたことだと思いますが、そもそも基準値の設定がどうなのか、絶えず見直してほしいと思います。
国際的に見て甘いという意見などもいろいろあります。
今回のニュースでいえば、足柄茶も、「基準値」を下回ったものは出荷をやめないとのことです。
水と同様に、年齢によっても「基準」は変わってくるでしょう。
2011年5月2日月曜日
東京の水
京都・大阪・奈良にいっていろいろ味わったところ、私が住んでいる某東京都内に比べて水が柔らかい!という体験を何度かした。
そこで東京の水について少々記してみたい。
東京=硬水=深蒸しについて
よく深蒸しにする理由として、東京の水は硬いから、というのを聞く。
でも東京の水でも普通蒸しのほうが好きな自分にとってはこの文句は当てはまらない。
さすがに東京と大阪の水の硬度の違いよりも、深蒸しと普通蒸しの違いのほうが遥かに大きいと思う。
欧米化した食文化=深蒸しについて
「西洋化した食生活だから深蒸し」という考え方もある。
この考え方は「写真が出てきたから絵もそれに対抗して精密に描かなければいけない」というのに似ている。
しかし、実際は、写真の登場によって絵は精密になるどころか、よりデフォルメされていった。
それまで持っていた写実性の役割を写真に譲って、より絵独自の生きる道を開拓する方向に時代は進んでいった。
お茶も、煎茶が煎茶という狭い枠内で深蒸しにして合わせても、所詮、珈琲や紅茶やプーアル茶の濃さには勝てないし、自分としては別にそこで「勝つ」ことが勝利とも思わない。
東京の水系について
別のブログを見るところによると、東京の水は3つに大別できる。
(1)多摩川水系
(2)荒川水系
(3)江戸川・利根川水系
である。
断然おいしいのは(1)なのだそうだ。
それには理由があり、(2)は埼玉、(3)は千葉・茨城方面を水源とし、他県にまたがっているのに対し、(1)は水源が東京(と山梨の境?)で、東京都が水源の山から管理しているため、断然美味しいとのことである。
他方、昔からまずいことで知られていたのが(3)のようだ。
Wikipediaで「金町浄水場」(江戸川)を検索すると「1984年には当時の厚生省が発足させた「おいしい水研究会」に「日本一まずい水道水」と評される」とある。
そして、乳児が摂取する基準値以上の放射性ヨウ素が検出されたのも(3)で、さらに上流(茨城に近い)の千葉県では測定値を公表するのを1週間以上遅らせたため、千葉県柏市在住の方の母乳からかなりの数値の放射性ヨウ素が検出されたりした。
千葉県担当者の隠蔽は多くの乳幼児を殺そうとしているに等しい行為だと思うのだが。
この件で、担当者は処分されただろうか?
東京の水道管
埼玉県某所の水道水よりも、東京都の水道水のほうが美味しいという体験をしたこともある。
田舎の埼玉のほうが美味しいはずなのだが、少し苔臭いというかドブの臭いが混ざっていた。
ある人に聞くところによると、東京は水道管に非常にお金をかけているため、他県よりも水道水が美味しい場合が多いのだそうだ。
水の美味しさには、単に「水系」という以外にも、非常に色々な要素がある。
もちろん「埼玉」「東京」といっても、蛇口毎に千差万別というところだろう。
近畿の水系は?
東京でも大きく3つの水系があるように、近畿地方でも、場所により水系が大きく異なるというのは想像に難くない。
京都の料亭などが、山から水を汲みに行く日常・・・のイメージがある一方で、大阪の一部では東京の金町浄水場のように、まずい水道水として悪名高くなってしまったものもあるようだ。
硬度はもちろんのこと、一括して「関西の水が」と語るのは愚かなことであろう。
機会があれば勉強してみたいところだ。
そこで東京の水について少々記してみたい。
東京=硬水=深蒸しについて
よく深蒸しにする理由として、東京の水は硬いから、というのを聞く。
でも東京の水でも普通蒸しのほうが好きな自分にとってはこの文句は当てはまらない。
さすがに東京と大阪の水の硬度の違いよりも、深蒸しと普通蒸しの違いのほうが遥かに大きいと思う。
欧米化した食文化=深蒸しについて
「西洋化した食生活だから深蒸し」という考え方もある。
この考え方は「写真が出てきたから絵もそれに対抗して精密に描かなければいけない」というのに似ている。
しかし、実際は、写真の登場によって絵は精密になるどころか、よりデフォルメされていった。
それまで持っていた写実性の役割を写真に譲って、より絵独自の生きる道を開拓する方向に時代は進んでいった。
お茶も、煎茶が煎茶という狭い枠内で深蒸しにして合わせても、所詮、珈琲や紅茶やプーアル茶の濃さには勝てないし、自分としては別にそこで「勝つ」ことが勝利とも思わない。
東京の水系について
別のブログを見るところによると、東京の水は3つに大別できる。
(1)多摩川水系
(2)荒川水系
(3)江戸川・利根川水系
である。
断然おいしいのは(1)なのだそうだ。
それには理由があり、(2)は埼玉、(3)は千葉・茨城方面を水源とし、他県にまたがっているのに対し、(1)は水源が東京(と山梨の境?)で、東京都が水源の山から管理しているため、断然美味しいとのことである。
他方、昔からまずいことで知られていたのが(3)のようだ。
Wikipediaで「金町浄水場」(江戸川)を検索すると「1984年には当時の厚生省が発足させた「おいしい水研究会」に「日本一まずい水道水」と評される」とある。
そして、乳児が摂取する基準値以上の放射性ヨウ素が検出されたのも(3)で、さらに上流(茨城に近い)の千葉県では測定値を公表するのを1週間以上遅らせたため、千葉県柏市在住の方の母乳からかなりの数値の放射性ヨウ素が検出されたりした。
千葉県担当者の隠蔽は多くの乳幼児を殺そうとしているに等しい行為だと思うのだが。
この件で、担当者は処分されただろうか?
東京の水道管
埼玉県某所の水道水よりも、東京都の水道水のほうが美味しいという体験をしたこともある。
田舎の埼玉のほうが美味しいはずなのだが、少し苔臭いというかドブの臭いが混ざっていた。
ある人に聞くところによると、東京は水道管に非常にお金をかけているため、他県よりも水道水が美味しい場合が多いのだそうだ。
水の美味しさには、単に「水系」という以外にも、非常に色々な要素がある。
もちろん「埼玉」「東京」といっても、蛇口毎に千差万別というところだろう。
近畿の水系は?
東京でも大きく3つの水系があるように、近畿地方でも、場所により水系が大きく異なるというのは想像に難くない。
京都の料亭などが、山から水を汲みに行く日常・・・のイメージがある一方で、大阪の一部では東京の金町浄水場のように、まずい水道水として悪名高くなってしまったものもあるようだ。
硬度はもちろんのこと、一括して「関西の水が」と語るのは愚かなことであろう。
機会があれば勉強してみたいところだ。
後の江製茶 2011年新茶サンプル
サンプルを頂いた。
思っていたよりも火香あり。そして蒸しも深めか。
茶葉を見ると色が黒い艶少なくやや黄味がかっている。
この一年で煎茶の勉強がかなり進んだ自分の基準が変わってしまったのか。
こちらのお茶作りが変わってしまったのか。
前者が有力である。
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