2018年6月16日土曜日

生産家直売のお茶が美味しくないことが多い理由

とある川根茶の生産者さんに、どこのを飲んでいるか問われたので、南園製茶さんのことを話したところ、「あそこは自分で作っておらず、いろいろなところから買っているから」とのことだった。
たしかに、色々な茶葉をブレンドしていると聞いたことがあるが、仕入れたものだったのか。

そしてそう言うときに生産家さんはたいてい、自園で作っていないところを一段下に見るような雰囲気を言外に感じさせる。

それではと購入させていただいたところ、案の定、ぱさぱさに乾燥させて酸っぱくなってしまっていた。
もちろん南園製茶さんのお茶に遠く及ばない。

経験上、生産家の直売するお茶は美味しくない場合もかなり多い。
それゆえ、実のところ大した驚きも無かった。

理由はいろいろ考えられるが、二つほど挙げておきたい。


・製茶の厳格さ

経験上、生産家直売のお茶は製茶の仕方が安定していないものが多い。
もちろん農作物なので誰が製茶しようが多かれ少なかれ必ずの味の振れ幅はあるが、仕入れて売っているところに比べるとロット毎、年度毎に、仕上げの仕方がより不安定な傾向が見受けられる。
小売店や生産家も自社製茶ではなくどこかの製茶会社に依頼したり共同所有の工場に持ち込んだりする場合も多いので、単純に売っている会社の製茶技術とは限らないが、仕上げに対する目が足りない場合が多いということを意味している。


・選択の不自由

また、根源的な問題として、基本的に自園の茶葉を使わなければならないという縛りがあること。
つまり、生産家直売の場合、天候不良や栽培の失敗で出来が悪い年でも自園の茶葉を使わなければならないのに対し、仕入れて売る側は、出来の良い茶葉を幾つかの茶園から選ぶことができるという点が強みとなっている。

農林水産大臣賞受賞茶園クラスの栽培をできる生産家が最高級の茶葉を用いる場合は、それに勝るものはないかもしれないが、それは100g数千円以上で、生産数も極めて少量になる。
100g2000円程度までのある程度数を出すものだったら、その年毎に出来の良い茶園から選べるほうが良い物に辿り着きやすいのかもしれない。


今回の場合は、そんなことを論じる以前の話で、品質管理ができていないというだけなので、論外と言えるが、何回か前に記したように、小売店で品質管理が悪く茶葉を台無しにしていた事例もある。
生産家直売だろうが仕入れて売ろうが、管理の良いところもあれば悪いところもあるというだけの話である。

ただ、自分が見てきた中で、生産家直売のお茶が不安定だったり美味しくなかったりする事例はすごく多いので、自分が生産家であるというだけで仕入れて売っているところを一段下に見るようなことは、絶対に止めたほうが良い、というのは間違いのないところだ。

2018年6月15日金曜日

「月牙泉」新茶 - 火入れ強め

「月牙泉」100g 2,160円 南園

※4月購入分

今年はとても早いということで、こちらの新茶も早かった。
芽が多く良質な茶葉を使っており、鮮度管理も上々だが、火入れが強め。
昨年秋に一度そんなことがあったが、新茶の時期に100g2000円のお茶でこの火入れはもったいないと思う。
今までに経験した中ではその二回以外は適度な火入れで、安定感があり大変完成度が高いお茶なので、時にはそんなときもあるかもしれない。
もう少し後のロットになると安定するかもしれないので、しばらく時間を空けてまた購入したいと思う。

2018年6月14日木曜日

生仕上げ新茶 ゆたかみどり - やや大振りな茶葉で素直にジューシー

生仕上げ新茶 ゆたかみどり 100g税込 1,512円(思月園)※4月購入

今年のお茶は全国的に非常に生育が早く、大切な時期に伸びすぎて大味なものが多かったと思うが、このお茶は一定水準を保っている。

しいて言うなら例年より若干葉が大振りで、味も芽の感じが少ないか。
しかし昨年よりもこの品種の持つ芋のような香りは減り、香りの方向性は素直で、ジューシーさが存分に味わえる。

このお茶の良いところは、二杯目三杯目と淹れてもジューシーな味が感じられるところで、一杯目で旨みがほとんど出尽くして後は出がらしのようなお茶になることは無い。
特に今年はその素直な香りが良く作用しているように思う。
但し、ある程度熱めのお湯で淹れないと真価は発揮できない。

肥料は多少あるかもしれない。

保管も上々。

一部で人気が高まっているらしく、早々に品切れになってしまったようだが、今年も素晴らしい味を体験できたことに感謝しつつ、来年以降も末永くお願いしたい。

2018年3月19日月曜日

とある本山茶専門店

初めて入った某お茶屋さんは、本山茶を専門に取り扱い、茶葉は300円ぐらいから2300円ぐらいまで煎茶だけで10種類ぐらい(?)並んでいたが、「更に上の物もある」とのこと。

とりあえず1,500円のものを購入し、家で開封してみた瞬間、すぐに失敗だと分かった。
外観は良いのだが、老ねた茶葉独特の酸っぱいような香りがしたからだ。
飲んでみると、確かに旨みも多めで良い茶葉だったようだが、酸味のようなものに邪魔されてよく分からない。

折角農家が丁寧に作っても、このようにお店の保管で台無しになってしまっている例は時折見受けられる。
蒸製緑茶の管理が大変なのは分かるし、それだけにきちんと保管しているお店には敬意を表したいが、杜撰な管理の専門店も散見される現状は残念だ。
個人的にも1,500円払ってこれはないだろうと思った。

本山茶が東海道の平地のほうのお茶に比べていかに優れているかを力説されたが、そんな素晴らしいお茶を台無しにしてしまったのは勿体ない。