栄えある第一回である。
・消費者参加型の品評会
これまでは、品評会というと業界内のみで行われていたが、日本茶Awardにおいては、業界内で事前選出されたお茶(2014年は281点から選出された19点)を、「TOKYO TEA PARTY」で一般消費者(要事前申し込み)がテイスティングして投票を行う。
業界内で事前選出した19点(「プラチナ賞」)の中でも特に高評価を受けたお茶(「プラチナ大賞」)と、業界選出19点の中から消費者が選ぶ「日本茶大賞」とがある。
・評価方法も味本位に変更
以前にも書いたが、従来の品評会は、「滋味」「香気」「外観」「水色」の4点から採点され、直接的には味とはいえない「外観」「水色」に25%前後の配点されている点については、賛否両論があった。
その点、日本茶Awardにおいては、「外観」や「水色」は気にせず、味(滋味+香気)で判断することとなった。
専門家が味だけで点数を付けるワインなどを考えてみても、この点では世界基準、あるいは出荷側というより消費者側の視線に近づいたと言える。
また、荒茶ではなく加工済みのお茶を、生産者が指定する温度や抽出時間で淹れている。
しかも業界内の選出では、二杯目の味まで見ているという。
・幅広いお茶を知ることに重点
渋谷ヒカリエで行われたイヴェントでは、出品された281点が並び、事前申し込みすると、281点から選出された19点を試飲し、お気に入りの1点に投票を行うことができる。
この消費者参加の試飲は、普通蒸し、深蒸し、玉露、希少品種、更には焙じ茶や発酵茶まであっての19点なので、良い点としては、幅広いお茶に触れることができるため、見聞を広めることができる点が挙げられる。
その一方で、19点に全てを詰め込んでいるため、たとえばその中に「玉露」はゼロで、「かぶせ茶」は一種類しか無かったことからも分かるように、消費者が特定の種類の中から選ぶようなことはできない。
同じ種類から日本一を選びたいのだという人々にとっては、不満の残る内容となっている。
事前選出された「プラチナ賞」の19点はこちら
【うまいお茶】部門
・京都府 中窪幸司出品 普通煎茶 やぶきた
・福岡県 (株)熊谷光玉園出品 普通煎茶 さえみどり
・鹿児島県 今吉耕己出品 普通煎茶
・静岡県 土屋裕子出品 普通煎茶
・福岡県 高木暁史出品 かぶせ茶
・熊本県 猪原真滋出品 釜炒り茶 やぶきた
・長崎県 (有)茶友出品 蒸し製玉緑茶 あさつゆ
・鹿児島県 (株)特香園出品 深蒸し茶
・鹿児島県 (有)小牧緑峰園出品 深蒸し茶 さえみどり
・鹿児島県 今隈幸洋出品 深蒸し茶
【香りのお茶】部門
・宮崎県 (有)井ヶ田製茶北郷農園出品 普通煎茶 おくみどり
・静岡県 森内吉男出品 普通煎茶 蒼風
・東京都 和多田喜出品 普通煎茶 蒼風
・京都府 (株)お茶の玉宗園出品 ほうじ茶
・岡山県 恒枝信雄出品 ほうじ茶
・佐賀県 太田重喜出品 釜炒り茶 ふじかおり
・静岡県 高橋一彰出品 発酵系のお茶 静印雑131実生
・静岡県 高橋達次出品 発酵系のお茶
・宮崎県 宮崎亮出品 発酵系のお茶
・表面的インパクトが有利になると事前に予想できた
したがって、そういうなかから「日本茶大賞」を選ぶことに起因する問題もある。
それは何かというと、「手っ取り早いインパクトがあるもの」、具体的には発酵茶や火香の強いもの、希少品種、珍しい仕上げなど、「変わった味のするものが圧倒的に有利になるだろう」ということが、試飲した時点で既に予見できた、という点に尽きる。
果たして結果は
○日本茶大賞
有限会社茶友(長崎県) 蒸し製玉緑茶 49票
○日本茶大賞特別賞
【うまいお茶】部門 株式会社熊谷光玉園(福岡県) 普通煎茶さえみどり 41票
【香りのお茶】部門 宮﨑亮(宮崎県) 発酵系のお茶 36票
(総投票数:358票/有効投票数:357票)
となり、業界内で選出した「プラチナ大賞」とは全く異なる結果となった。
味・香りのちょっと珍しい、変化球のものばかりである。
この結果を見ると、ともするとこれまで高級茶の代表とされてきた「玉露」「かぶせ茶」、あるいは日本茶の代名詞である「やぶきた種の普通蒸し煎茶」などが劣っているという誤解を与えかねないが、そうではない。
ひとえに19点に全てを詰め込んだエントリーの仕方によるところが大きい。
予備知識が無い状態で、旨みや香りが珍しいものが続く中、オーセンティックなお茶の味を一瞬で評価できる一般人がどれだけいるだろうか、ということである。
それはかなり難しいのではないかと思う。
肯定的に捉えれば、普段多くの消費者は触れる機会があまりなかったと思われる発酵茶や玉緑茶が知られるきっかけになり、更にそれらが高い評価を得た、ということもできる。
その一方で、うわべのインパクトが大きいお茶ばかりが高評価を得てしまう仕組みに多くの人が無自覚のまま評価がなされてしまうことには、大きな危惧も覚える、というのが偽らざる感想である。
このような危うい選び方で素人が評価を下す仕組みだけが「消費者参加」のかたちではないように思う。
むしろ、専門家たちが本気で評価する場面が見てみたい。
たとえば、色々な地方の専門家がお茶を飲みながら議論を交わし、観覧者も同じお茶を飲みながらそのお話を聞ける(時には発言も)、というような形式のほうが有意義だと思う。
・「プラチナ大賞」の価値
その意味においては、業界内の事前審査で「プラチナ大賞」を獲得した二点のほうが、信頼性は高いように思う。
その二点は、
【うまいお茶部門】
深蒸し茶(株)特香園(鹿児島県)
【香りのお茶部門】
煎茶(有)井ヶ田製茶北郷茶園(宮崎県)
となっている。
絵に描いたように深蒸しと普通蒸しが一点ずつとなっているが、九州、それも南勢に偏ったのを変に排除しなかったのは素晴らしい。
普通蒸しのほうの(有)井ヶ田製茶北郷茶園(宮崎県)は、たしかに美味しかった。
だが見方を変えれば、アミノ酸的な旨みにやや偏り、火香もかなりあるのではないか。
評価者にもっと関西のお茶業者さんがいたら、プラチナ大賞を獲れただろうか?
もう少し「旨み」一辺倒ではない味わいだと更に良かったと思う。
その他気になった点を少し挙げようと思う。
・プラチナ賞19点は売り切れ続出
事前選出された19点は人気で、早い段階で大半が売切れてしまった。
「プラチナ大賞」2点をはじめ、「プラチナ賞」19点は、それが決定した時点でより多めに取り寄せて販売したほうがよさそうだ。
もちろん、第一回で数字の見えない中、予想以上の売れ行きだったということを意味しているので、この売り切れは嬉しい悩みでもあったといえる。
・19点から漏れた出品茶を買いたくなる動機付けが必要
また、主に19点から漏れた残りの200点以上が販売されていたが、さすがに数が多すぎて選びきれないのと、「19点に入賞できなかったものか」という先入観を払拭する仕組みが必要かと思った。
たとえばいくらか料金を払うことで一定時間もしくは一定回数試飲できるようにしたりすると、選びやすいかもしれない。
・Awardをアワードと読むのはどうか・・・
所詮カタカナ化の話だから完全に正確にはなり得ないが、"Star Wars"が「スター・ウォーズ」であるように、"Award"は「アワード」ではなく「アウォード」とするほうが適切だと思う。
できれば複数形でAwards(アウォーズ)と書くべきものかと思う。
サッカーは「Jリーグ・アウォーズ」と名乗っている。
色々改善できそうな点はある。しかし「口で言うこと」と「実現すること」は全く別のものであり、実際にこのようなイヴェントを行うことには、途方も無い労力が伴っている。
単純な目先の損得だけを考えていたら絶対にできないことである。
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