- 全国茶品評会
- 関西茶品評会
- 九州茶品評会
- 東京都優良茶品評会
- 静岡県茶品評会
- 京都府茶品評会
- 福岡県茶共進会
全国茶品評会について
中でも、全国茶品評会は、2011年で65回を数える日本最大のお茶の品評会で、毎年全国のどこかで持ち回りで開催されている。
8月末ごろに「審査会」が行われ、9月末~10月頭ごろにそのお茶の「入札販売会」が行われているようである。
審査結果を見ると、開催地の出品や入賞が多く、正直、「国体」のようなところも感じる。
地元だから出品しやすかったり、奨励されたりというのもありそうだが、穿って見るなら、開催地の出品者(あるいは開催地の審査委員長)でなくて上位入賞しているのは真の実力者ともいえるのかもしれない。
「一等」は複数者
全国茶品評会の入賞を見ると、「順位」と「等級」があり、たとえば、「一等」「二等」「三等」は各一つではなく、各複数ある場合が多い。
こちらhttp://www.pref.saitama.lg.jp/page/housyoukitei.htmlによると、
- 一等賞 出品点数の 5%以内
- 二等賞 出品点数の10%以内
- 三等賞 出品点数の15%以内
それとは別に「順位」も公表される。
もしあくまで厳密にNo.1をさがすなら、「一等」ではなく「一等一席」ということになる。
「モンドセレクション金賞」など、「金賞」や「一等賞」がたくさんあることは時おり話題になっており、「金メダルや一位が一つである」と思っている人たちからすると違和感があるようだが、古くからあるヨーロッパの賞には複数の最高賞というのは少なくない。
日本茶の品評会も、時代背景を考えるとその流れを汲んでいるのではないかと想像する。
農林水産大臣賞がブランド
上位入賞者には
- 農林水産大臣賞
- 農林水産省生産局長賞
- 社団法人日本茶業中央会会長賞
- 全国茶生産団体連合会会長賞
- 全国茶商工業協同組合連合会理事長賞
ただ、こちらhttp://www.fukuoka-yamecha.jp/whats/winning.htmlを見ると、「全国茶品評会」のみならず、「九州茶品評会」「福岡県茶共進会」でもトップになると「農林水産大臣賞」が与えられているので、「農林水産大臣賞受賞茶園」と言っても、どれで貰ったのか分からない。
「県一位」と「全国一位」は違うようにも思う。
もちろん、たとえば「東京都優良茶品評会」のような大消費地で開催される品評会の場合、東京産だけではなく、全国各地からの出品があり、単純に「都道府県一位でしかない」ということはできない。
が、「全国茶品評会」は規模の点でも歴史の長さからも飛びぬけていて、同じ賞で良いのかというのには、少々疑問もある。
地方品評会の可能性
「全国茶品評会」はたしかに最大規模なのだが、その一方で、より個性を求めるならば、違う楽しみ方もある。
たとえば、「関西茶品評会」や「宇治茶品評会」は、「全国茶品評会」よりも、近畿の人に好まれる傾向のお茶が多く集まる。
東京などの大消費地や、静岡や鹿児島のような大産地の品評会では難しいかもしれないが、地方の品評会にはそのような楽しみ方もある。
関西や宇治の品評会以外も、各地の個性が出ると更に面白いと思うが、そのためには個性を楽しんでくれる消費市場が一定規模見込めることが条件となりそうだ。
品評会の採点方法と市場評価
もともと品評会は、日本で「お茶」といえば、地域差が大きすぎる、今日で言う「番茶」が当然だった近代初期に、当時の主力輸出商品であった「煎茶」の技術・規格を全国的に標準化するという意図も大きかったらしい(『お茶は世界をかけめぐる』高宇政光著、筑摩書房刊、2006年)。
その名残あってか、直接「味」(香気+滋味)と関係が無い、「水色」(すいしょく)から「外観」(茶葉の色・形状)に至るまで審査基準となっていて、かなりの点数配分を与えられている。
たとえば煎茶の点数配分は
香気 75点
水色 30点
滋味 75点
外観 20点
合計200点であり、「水色」と「外観」が50点、つまり全体の25%を占めている。
(年度によって若干配点の変更があるが、およそ例年このような配点。)
日本一をめぐって1点を争う大会で 配点の25%が味以外というのは、意外なほど多いように思う。
ここらへんが、評論家が基本的に味だけで点を付けるワインなどと違う点で、今後改善が必要な点なのかもしれない。
品評会の点数と入札者の市場評価がずれていることも多々あるとのことである。
点数配分や審査方法はこちらを参照。
http://www.pref.saitama.lg.jp/page/sinsayouryou.html
情報が得にくい
それでも、点数で全国的にお茶を評するというのは、興味深い一大イヴェントである。
にしては2012年現在のところ品評会結果の情報をネットでまとめて見ることができない。
どうも開催地の担当なのか、開催県が思い思いの様式でウェブ上に掲載しているが、例えば過去5年のデータをまとめて見たいときなどに苦労する状態になっている。
また農協単位で動いている生産者が多いせいか、生産者本人のお茶が思いのほか買いにくく、産地や農協単位に溶けて消えてゆく例が多いのも惜しい。
たとえば、上位入賞者の名前や組合名で検索しても、お茶が買えるところまでなかなか辿り着けない。
また、「お茶離れ」などと言われるわりに、宣伝活動が業界内に留まっていてる感がある。
たとえば、将棋のタイトル戦を「ニコニコ動画」で中継しているのを見たら、プロが実況解説して視聴者がリアルタイムでコメントをつけてゆく様子が大変面白かったのだが、日本茶の世界でも、工夫次第ではコストをそんなにかけずに世にアピールしてゆくことが可能だろう。
10年前にはお茶屋さんのウェブ・サイトなど数えるほどしかなかったのを考えると、10年後には品評会がもっと国民の多くが注目する大会に育つ可能性だってある。
- 審査基準を「殖産興業」的なものから「味本位」に現代化する
- 日本茶の一大イヴェントである品評会をもっと多くの人の知るものとする
- 情報をまとめたサイトを作る
- 各品評会の個性を楽しむ
もちろん、99%以上のフランス人がボルドーの一級シャトーのワインを毎日飲んでいるわけではないしその必要もないのと同じように、日本人も、普通の人が品評会上位入賞の日本茶を毎日飲んでいるわけでもない。
しかし、たまにでも「高くて美味しいお茶」を飲むことは、感性を深める、とても素晴らしい経験になるだろう。
日本一のお茶を決める一大イヴェント、今後も注目・応援してゆきたい。