蓬莱堂茶舗「常盤木」(2,150円)は、同店通常ラインナップの煎茶の中では最上位のものになる。
この上をゆく「出品茶 上」(3,250円)、「出品茶」(2,750円)は、普通に考えたらブレンドしていないと思われるが、通常品の「常盤木」以下は味を保つためにブレンドしているかもしれない。
であれば、「常盤木」以下にこそよりお店の味が色濃く出ているかもしれない。
外観は、絵に描いたような高級煎茶そのもので、黒味がかって、細長く撚られたもの。
前回書いた「一保堂」さんの「嘉木」よりも遥かに典型的な高級煎茶の姿(なり)をしている。
味はもう完璧の域で、旨みの周りに葉の味が重層的に広がる。
アミノ酸的旨みだけではなく、葉の複雑な味がバランスよく混ざっているところが蓬莱堂さんのお茶の真髄であると思う。
残念ながらほとんどのお茶は、肥料過多によりアミノ酸的な旨みばかりが突出してしまったり、反対にナチュラル志向のものはパサパサで渋みばかり突出したり、あるいは、火入れしすぎてその香りばかりが突出したり、どこからしらが立ってしまいがちだが、このお茶はそのようなところが無く、本当にバランスが良い。
そして、今年度のこの「常盤木」も、黒味がかった茶葉に見られる木の実のような味も。
渋みは一般的な静岡茶より少ないものの、「一保堂」さんの「嘉木」よりはあるので、同じように絞り出しで玉露を淹れるようなやり方をするとさすがに渋みが目立つ。
小さめの急須が向いているかもしれない。
今まで飲んだ今年度産の煎茶の中では断然完成度が高いと感じた。
無農薬を除いたら、今年度はもうこのお茶で打ち止めでも良いかもしれない、と思うほど。
もし、これから「良い煎茶がどういうものか知りたい」という人がいたら、このお茶をお勧めしたい。
できることなら、窒素の害から自由になったお茶や無農薬のお茶を売るということにも、より力を入れていただけたらと思う。