2016年1月14日木曜日

淡い味を最上位に据える矜持――一保堂「嘉木」

一保堂さんの煎茶でも通常ラインアップ中では最高級に位置する「嘉木」。
言うまでも無く茶経から引用したと思しき名である「嘉木」だが、一保堂さんは喫茶店にも同名を付けており、この語への愛着を感じる。

茶葉を見ると、そこまで針状には揉んでこそいないものの、若い芽がふんだんに入っている。
淹れてみると、若い芽らしく、渋みの少ない淡い味。
香りは華やか過ぎずあくまで落ち着いている。
また、ある程度しっかり乾燥させている。

下級煎茶をガブガブ飲むような淹れ方では、全く真価を発揮できない。
絞り出しを使い、高級煎茶に相応しい淹れ方をすると、俄然魅力を見せる。
エキス的になったときに初めて、このお茶の渋みの少なさが意味を持つ。
ただ、蓬莱堂さんのお茶のような茶葉の重層的な旨味は、「嘉木」にまだ欠けている点か。

それでもこの澄んだお茶を前にすると、「中嶋農法のお茶」はアミノ酸的旨みに偏りすぎていて肥料のやり過ぎと火香が気になってしまうほどだ。
価格が全く違うとはいえ、別世界の味である。
この淡く澄んだ茶葉を通常のラインアップの最上位に持ってくることに敬意を表したい。

2016年1月9日土曜日

昔、先入観にあった「有機」の風味 有機一番摘み 月ヶ瀬煎茶

気になっていた奈良県の有機栽培茶。
「農薬不使用の・・・」ではなく、ちゃんとJAS有機認証を受けている。

茶葉は大きく育った葉が茎までしばしば入っているので一針二葉の味とはほど遠い。

何より、とにかく乾燥させているので、酸っぱいといえるほど渋くなっている。

私が有機栽培のお茶をよく知る前に抱いていた先入観そのもののようなお茶。

有機栽培とこういう仕上げ方はセットになりがちであるという現実を見ると、多くの消費者が有機栽培のお茶というものに対して思い浮かべそうなものを忠実に体現しているといえる。